ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は胎盤を構成する絨毛細胞(ジンチチウム細胞)から分泌される糖タンパク質である。hCGは黄体化ホルモン(LH)作用があり、妊娠持続作用(黄体機能刺激、子宮収縮抑制)、胎児副腎刺激などの作用を示す。(胎盤の基本構造の詳細に関しては「胎盤の構造」を参照して下さい。)
妊娠が成立するとhCGが急速に分泌される。黄体の寿命は個人差がなく約14±2日間であるが、妊娠によって分泌されたhCGのLH作用、妊娠持続作用によって黄体の退行変性は阻止される。そのために黄体はさらに大きくなり妊娠黄体と呼ばれ、以下の「着床期周辺のホルモン」の図で示すように、黄体ホルモン(プロゲステロン)、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌は亢進し、月経になることはない。正常黄体期(月経黄体)の長さは約2週間であるが、hCGの黄体刺激作用によって妊娠黄体のlife spanが約6週間延長する。
hCGの作用により卵巣が刺激され、その結果として卵巣が腫大することがあります。黄体嚢胞と呼ばれていますが、卵巣腫瘍合併妊娠の大部分を占めています。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬受精と着床? |
| 発生の第1段階は卵管内の受精に始まる。ヒトにおける、受精から着床までの期間は約9日間(卵管内の受精卵の輸送に3日間、子宮腔内に下降してから着床までに6日間、合計9日間)との報告が多い。受精後6〜7日の頃に着床を開始するという。受精と着床に関する詳細に関しては「妊娠の仕組み」を参照して下さい。月経の仕組みに関しては「月経の仕組みと女性ホルモン」を参照して下さい。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬着床期周辺のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の分泌 |
妊娠が成立すると、受精卵の一部(栄養胚葉と呼ばれる組織)から生じる発育中の胎盤の絨毛組織からhCGが急速に分泌される。以下に「着床期周辺のホルモン」および「着床直後の尿中hCG排泄量と妊娠経過」を示した。これらは月経初日から計算して14日目に排卵した場合の模式図です。受精卵によって分泌されたhCGは、直ちに母体尿中に排泄される。正常妊娠では排卵後10日前後より尿中hCG濃度は急速に上昇する。正常妊娠の場合には、排卵後12日目頃(着床後約3日)には25IU/L、排卵後14日目頃には50IU/L以上に達する。以後も妊娠週数に比例して上昇を続け、妊娠9〜12週の頃にピークになり、hCG値は500,000IU/Lにも達する。その後、漸減し、30,000IU/L前後で妊娠末期まで分泌を続ける。
正常妊娠の場合の尿中hCG濃度のdoubling timeは妊娠4週以降では、1.5日と言われている。すなわち、3日で4倍に上昇することになる。上図に示したように、急速にhCGが上昇していることが解る。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬 妊娠検査薬 |
妊娠反応に使用される検体は一般的には尿である。妊娠検査薬の正式名称は「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)検出用キット」です。すなわち、上記の尿中hCGを検出する検査薬です。さらに、尿中hCGが検出されることを「妊娠反応が陽性である」と表現されます。同様に尿中hCGが検出されないことを「妊娠反応が陰性である」と表現されます。
医療機関で使用される妊娠検査薬と薬局で一般用に市販されている妊娠検査薬は基本的に同じものです。ただし、一般用の妊娠検査薬の感度は50IU/Lであるが、医療機関で使用される妊娠検査薬の感度は25IU/Lとさらに高感度になっている(もちろん医療機関でも感度が50IU/Lの妊娠診断薬を使用する場合もあります)。以下に市販の妊娠診断薬の一部を列挙する。
最も早く妊娠反応が陽性になる時期は?
上記した「着床期周辺のホルモン」および「着床直後の尿中hCG排泄量と妊娠経過」を参照して下さい。正常妊娠の場合には、排卵後12日目頃(着床後約3日)には25IU/L、排卵後14日目頃には50IU/L以上に達します。すなわち、尿中hCG濃度は予定生理数日前(月経停止前)、少なくとも予定生理日の頃には妊娠検査薬の感度以上になっています。従って、この時期には妊娠反応を行えば陽性になります。妊娠の診断だけならば妊娠反応が妊娠の最も早い診断方法である。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬 妊娠検査を行う時期は? |
妊娠検査を行う時期は排卵日を基準にし、排卵後約3週間目の頃に行うべきです。この頃の尿中hCG値は妊娠検査薬の感度より遙かに高値になっています。
妊娠が思い当たる性交日がはっきりしている場合には(その日が排卵日であると仮定して)、性交日から約3週間経過して無月経の場合には妊娠検査を行って下さい。
生理が順調な場合
生理が順調な場合には予定生理後1週間程度経過した頃に行って下さい。理論的には排卵後10日目頃には陽性になる可能性が高いですが、確実に診断するためには生理が1週間程度遅れた時期に行うのが一般的です。
生理不順がある場合
排卵までの期間が月経周期(月経初日から次回月経開始日前日までの期間)を決定します。排卵後に形成される黄体の寿命は個人差が無く約14±2日で一定であるために、排卵から次回月経までの期間は個人差がなく一定である。たとえば、排卵が1週間遅れる、すなわち月経周期の21日目に排卵した場合には月経周期は35日(21+14=35日)になります。
基礎体温などにより排卵日がわかる場合には、その日から約3週間後に妊娠検査を行って下さい。排卵日が不明な場合には過去の月経周期を参照にして生理予定日を求め、その約1週間後に妊娠検査を行って下さい。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬 妊娠検査薬(妊娠反応)が陽性とは? |
健康な男性や健康な妊娠していない女性から採取した尿検体中のhCGは、妊娠検査薬の感度以下に設定されています。決して陽性になることはありません。
妊娠検査薬には一定の感度(最少検出量)が設定されています。一般用の妊娠検査薬の感度は50IU/L、医療機関で使用される妊娠検査薬の感度(最少検出量)は25IU/Lに設定されています。すなわち、検体尿中のhCG濃度がそれぞれの妊娠検査薬の感度以上である場合には陽性になります。
一般的には、妊娠反応が陽性である、すなわちhCGが検出されるとは「hCGを分泌する絨毛の存在」を意味しています。さらに、絨毛は受精卵由来であるために、絨毛の存在は「受精卵の存在」を意味しています。受精卵の存在はまさしく「妊娠」を意味していることになります。ごく一部の例外はありますが後述します。
妊娠の鑑別診断
妊娠反応が陽性であるとは上記のように大部分が妊娠です。しかし、妊娠といってもさまざまで、正常妊娠とは限りません。流産、子宮外妊娠の場合にも妊娠反応は陽性になります。妊娠反応だけでこれらの疾患の鑑別は出来ません。超音波診断法など総合的に診断されなければなりません。正常妊娠の超音波検査に関しては「妊娠初期・正常胎児超音波像」を参照して下さい。
妊娠反応が陽性になった後に陰性になる場合
上記のように最近の妊娠反応は極めて高感度になっています。性器出血を伴い、妊娠反応が陽性になった後に(数日後に)自然に陰性になる場合があります。これは妊娠のごく初期の流産です。すなわち妊娠のごく初期に妊娠反応を行い、妊娠のために妊娠反応は陽性になります。しかし、性器出血を伴い流産(全流産)してしまい、妊娠が完全に終了したために妊娠反応は陰性になります。
このような臨床的に妊娠が確認できない自然流産はしばしば認められます。このような流産も含めれば妊娠の約1/3が流産するとの報告もあります。適切な時期に妊娠反応を行わなければ陽性にならず、月経あるいは原因不明な性器出血として処理されます。このような自然に妊娠反応が陰性化する流産は特別な対応をとる必要性はもちろんありません。
性器出血とともに妊娠反応が自然に陰性化する流産は、着床後まもないごく初期の妊娠の場合にのみ見られる減少です。もう少し経過した妊娠の場合にはたとえ流産後であっても流産直後は妊娠反応は陽性になることがほとんどです。この場合には確定診断後に流産手術が行われます。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬 妊娠していないのに妊娠反応が陽性になる場合 |
検体尿中のhCG濃度が妊娠検査薬の感度以下である場合には陰性になります。生理不順があって、排卵日が不明な場合などに妊娠検査を行って妊娠検査が陰性であっても、必ずしも妊娠を否定しているとは限りません。
妊娠検査が陰性であるとは、妊娠検査を行った日のhCG濃度が妊娠検査薬の感度以下であることを示していますが、これからhCG濃度が上昇する可能性まで否定している訳ではありません。従って、無月経が続く場合には1週間後に再度妊娠検査を行って下さい。排卵が遅れている場合には最初の妊娠検査は陰性であっても、2回目あるいは3回目の妊娠検査で陽性になることも時にはあります。いずれにせよ、無月経が続く場合には専門家の診断を受けるべきです。
月経の開始日から排卵までは生理が順調な人は14日目ですが、生理不順の人は14日目ではなくもっと遅れます。この排卵日付近に受精が成立しますので、排卵が遅れれば遅れるほどあとに妊娠反応は陽性になります。排卵日から2〜3週間、思い当たる性交日から2〜3週間すると妊娠反応がはじめて陽性になります。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬 薬剤の妊娠検査に及ぼす影響 |
上記したように不妊症治療や黄体機能不全の治療で使用されるhCG製剤は妊娠の有無に関係なく妊娠反応が陽性になる場合があります。
しかし、その他の薬剤で妊娠検査に影響をを及ぼす薬剤は報告されていません。すなわち、風邪薬、鎮痛剤、抗生物質、ホルモン剤などは妊娠検査に対して影響を及ぼすことはありません。 |
| 妊娠 - 検査薬・診断薬・診断器・判定試薬 嗜好品のの妊娠検査に及ぼす影響 |
| 飲酒、たばこ、コーヒーなどの嗜好品の妊娠検査に及ぼす影響は全く認められません。 |